東京高等裁判所 昭和34年(ネ)3044号 判決
被控訴人は昭二九年一二月二〇日控訴人会社の取締役に就任したこと、しかして被控訴人主張の本件(五)ないし(七)の金銭貸借は被控訴人が右取締役在任中になされたものであることは当事者間に争いなく、被控訴人が右金銭貸借をなすに当り、控訴人会社の取締役会の承認を得たものと認めるに足りる証拠はない。そうすると本件(五)ないし(七)の金銭貸借は商法第二六五条の規定に違反して無効であると言わなければならない。およそ右商法の規定は会社の執行機関である取締役と会社との間の法律行為はあくまで公明にして他の取締役の諒解をも得させることにして会社の利益が害せられないようにする趣旨から出たものと解すべきである。故に取締役と会社間の行為で実際上会社の利益が害せられないと言うようなことでは右規定の適用を排除する根拠にはならない。さればこの点に関する被控訴人の主張と原審の見解はいづれも当裁判所は採用しない。
(角村 加藤 宮崎)